第6章 昔話をしてみようか…
「……斗和」
「ん?」
実弥が再び斗和を抱き寄せる。
「もう一回」
「ふふ、何回する気だよ」
言いながらも斗和は拒まない。
唇が重なり、離れればまた抱きしめる。
「……足りねェ」
「あたしも」
またキス。
また抱きしめる。
二人とも、遊郭で離れていた時間を埋めるように何度も互いを確かめていた。
――しかし。
少し離れた路地では、任務帰りの鬼殺隊士たちが固まっていた。
「……あれ、不死川さんだよな?」
「隣にいるの……酔柱じゃねぇか?」
「え、抱きしめてる……」
「今、キスしたよな?」
「見なかったことにしようぜ……」
「無理だろ。明日には隊中に広まるぞ」
その予想通り――。
翌日には、
『不死川さんと酔柱、遊郭から帰ってきて早々ずっと抱き合ってたらしい』
『しかも何度もキスしてたって』
『めちゃくちゃ仲良いじゃん……』
そんな噂が瞬く間に広がった。
一方その頃。
斗和が一人で屋敷に戻っていると――
「斗和さん!!」
玄関から聞き慣れない声が響いた。
「ん?」
斗和が顔を出す。
そこには、必死な顔をした少年――玄弥が立っていた。
「玄弥……?」
玄弥は勢いよく頭を下げる。
「お願いします!!」
「ちょ、何!?」
「兄貴に会わせてください!!」
「…………」
斗和は固まった。
そして、嫌な予感しかしない顔で呟く。
「……実弥、何やったんだよォ」
「違います!」
玄弥は慌てて顔を上げる。
「俺が……俺自身のことで、兄貴に聞きたいことがあるんです!」
斗和はしばらく玄弥を見つめ――
「……分かった」
小さく息を吐いた。
「実弥に連絡してやるよ」
「ありがとうございます!!」
その頃、別の場所では。
「……クシュン!」
実弥が盛大なくしゃみをした。
「……誰か俺の噂でもしてんのかァ?」
その噂の中心人物だとは、本人だけがまだ知らなかった。