第2章 誰も知らない秘密
「俺まで巻き込め」
実弥の言葉に、斗和はしばらく目を丸くしていた。
やがて――ふっと笑う。
「……ガキが何言ってんだか」
「ンだとォ?」
「実弥はまだまだ青いってこと」
斗和は酒瓶を懐へしまいながら、いつもの調子に戻る。
「ちなみに、このことは秘密ね?」
「……あァ?」
「毒のことも、身体のことも。誰にも言わないで」
「テメェ……」
実弥が言い返そうとした、その時。
「カァーッ!カァーッ!」
鎹鴉が屋敷へ飛び込んできた。
『緊急任務!北の山に鬼出現!複数の隊士が交戦中!至急向かえ!』
斗和が立ち上がる。
「行くよ、実弥」
「……あァ」
二人は夜の山へ向かった。
到着すると、すでに隊士たちが倒れていた。
そして木々の隙間から、巨大な鬼が姿を現す。
「来たかァ!」
鬼が実弥へ飛び掛かる。
「実弥!」
斗和が割り込んだ。
鬼の爪が斗和の肩を深く裂く。
「斗和!」
「――大丈夫!」
血が滴る。
その瞬間、鬼の動きが止まった。
斗和の血が付着した爪から、肉が焼けるように崩れていく。
「ギャアアアア!」
「今だァ!」
斗和は痛みに顔を歪めながら刀を振り抜いた。
一閃。
鬼の首が宙を舞う。
静寂が戻った。
「斗和!」
実弥が駆け寄る。
だが斗和はふらつきながら振り返り、困ったように笑った。
「……あんたみたいなのが……あたしを守る?」
「……斗和?」
「……あたしに守られてんじゃん……」
口元に、小さな笑み。
「……ばーか……」
そのまま斗和の身体から力が抜けた。
「おい……斗和!」
実弥が慌てて抱き止める。
腕の中の斗和は、静かに目を閉じていた。
「……ふざけんなァ……」
実弥は震える拳を握り締める。
守られた。
――その事実が、今は何より悔しかった。