第8章 想い…②
「……実弥、あったかいねぇ」
「お前が勝手にくっついてんだろォ」
「だって離さないって言ったじゃん」
「言ったァ」
「じゃあ責任持って温めてよ」
「……ったく」
呆れながらも、実弥の腕はさらに強くなる。
斗和はその胸元で、ふにゃっと笑った。
「こうしてるとさぁ……なんか、全部どうでもよくなるね」
「……あァ」
「任務も、柱稽古も、鬼も……今日は忘れちゃおうかな」
「いいんじゃねェかァ」
「実弥も?」
「お前といる時くらいはなァ」
「……好き」
「……っ、急に言うなァ」
「言いたくなったんだもん」
斗和が嬉しそうに笑い、実弥の胸へ頬をすり寄せる。
「もう一回ぎゅーして」
「さっきからずっとしてんだろォ」
「もっと」
「欲張りだなァ……」
実弥が斗和を抱き直した――その瞬間。
――ドォォォンッ!!
大地そのものを揺らすような爆音。
「「……ッ!?」」
二人の表情が一変する。
斗和は反射的に実弥から離れ、爆音の方向へ顔を向けた。
「……今の、何……?」
実弥は答えない。
鋭く目を細め、音のした方角を睨みつける。
次の瞬間。
「……産屋敷家の方角じゃねぇかァ!?」
「……嘘でしょ……?」
斗和の顔から血の気が引く。
産屋敷家。
鬼殺隊の中心ともいえる場所で、あんな爆音がする理由など普通では考えられない。
「実弥……」
「あァ」
先ほどまでの柔らかな声とは違う。
実弥の声には、明確な殺気と緊張が滲んでいた。
斗和もすぐに立ち上がる。
「行くよ!」
「あァ!」
駆け出そうとした斗和の手を、実弥が掴む。
「離れんなァ!」
「分かってる!」
二人は手を繋いだまま、産屋敷家へ向かって走り出す。
背後には、もう甘い時間の名残などない。
ただ胸の奥を嫌な予感が締めつけていた。
――何が起きた?
――産屋敷様は無事なのか。
答えはまだ、誰にも分からなかった。