第7章 想い…
隊士たちが稽古場へ戻ったあと。
縁側に並んで座る実弥と斗和の間には、静かな空気が流れていた。
「……なァ、斗和」
「ん?」
「玄弥のことなんだが」
実弥の表情が真剣になる。
「鬼になったあいつが……俺の血を飲んで、それでも意識を保ってた。お前の酒の呼吸まで使えるようになっただろォ」
「うん」
斗和は静かに頷く。
「普通なら、鬼になった時点で終わりだと思う。でも玄弥は違った。実弥の血が、あの子の鬼としての身体を安定させてる可能性がある」
「……俺の血が、か」
「たぶんね。しかも酒の呼吸まで使えるなら、あたしの呼吸を身体がどう取り込んでるのか、まだ分からない」
実弥は拳を握る。
「だからこそ、俺ァ怖ェんだよ」
「……実弥」
「あいつが鬼の力に慣れすぎたら、戻れなくなるんじゃねェかってな」
斗和は少し考えたあと、静かに口を開いた。
「だったら、二人で見ていこう」
「二人で?」
「うん。実弥は玄弥の血のこと。あたしは酒の呼吸のこと。変化があったら、すぐ気づけるようにする」
「……」
「玄弥を一人にしない。それが一番大事じゃない?」
実弥はしばらく黙り――やがて小さく息を吐いた。
「……あァ」
「実弥も、もう少し玄弥と話してみたら?」
「無理だァ」
「即答なんだ」
「……あいつの顔見ると、余計なことまで言いそうになるんだよォ」
斗和は苦笑した。
「じゃあ、言っていいんじゃない?」
「何を」
「『死ぬな』って」
実弥は目を伏せる。
「……それくらいなら、言えるかもしれねェ」
斗和は微笑んだ。
「じゃあ決まり。玄弥は、あたしたち二人で守ろう」
「……あァ」
その返事だけは、迷いがなかった。