第22章 幸せな日々
指輪を選んでいる間の、透さんの視線が気になって仕方ない。
前回の婚約指輪を選ぶとき以上に、柔らかく優しい目をしていて、とにかく私を眺めてこのシチュエーションを楽しんでいる。
きっと、指輪のデザインは何でもいいんだと思う。
それよりも私が結婚指輪を選ぶ姿を見ることが楽しい、という様子。
こそこそと小声で透さんに話しかけた。
「透さん、ちょっと見過ぎ。気になって選べないよ。」
「ん?悪い、気にするな。」
見るのをやめる気がない返事で、もうあきらめた。
結婚指輪はなるべくシンプルなデザインを選び、結婚記念日とお互いのイニシャルを刻印してもらうことにした。
イニシャルが透の「T」じゃなく「R」で、店員さんに首を傾げられたけど、見た目が外国人っぽいのをいいことに、"名前がもう一つあってー…"と適当に誤魔化した。
「ねぇ。片方の指輪は私から透さんに贈りたい。」
「駄目です。」
「……私も何か贈りたい。」
「さんからはもう、たくさんのものをもらいましたから。」
「ん?何かあげたっけ?何もあげたことない気がする…。」
「もらいましたし、これからももらい続ける予定です。
それに、さんは僕との約束を守ってくれればそれでいいので。」
約束・・・
『何があっても、僕の傍を離れるな。』
『気負わないでくれ。ただ、傍に居てくれればいい。』
「わかった。約束を守り続けるね。」
「えぇ。それが僕にとって一番の贈り物です。」
零は、大切な人と 今を過ごせることが、いかに幸せなことなのかということを身をもって知っている。
だから、物よりも、私という存在自体の価値がとても高くて、すごく大切にしてくれているのがわかる。
零がお会計をしている間、店員さんから
「すごく優しい旦那様ですね。しかも美男美女のご夫婦で羨ましいです。ずっとお幸せに。」
と声をかけてもらった。
たしかに透さんのときはすごく優しくて、これぞいい夫って感じ。
「おい」とか「こら」とか言ってくる零との差が何だか面白くて、思わずクスっと笑ってしまったが、
「ありがとうございます。いつまでも優しい夫でいてもらえるように私も頑張らないと。ふふっ。」と返事した。