第19章 強盗(1)
当然だけど、スマホの電源を落とすよう犯人が指示し、通信機器はすべて没収された。
最初に聞こえた爆発音は、銃声だった。
なるほど。脅しの一発ってやつね?
どうかこの人たちが、人の命までは奪いませんように……
そう願ったのも虚しく、犯人をなだめようとした男性が、目の前で撃たれて倒れた。
「は…?」
小さく驚愕の声が零れ出て、ショックで固まってしまった。
早く…っ!手当を───!
そう思っても、体が動かない。
あちこちで恐怖の叫び声が聞こえる。
「騒ぐな!!!静かにしろ!!!」
犯人の怒鳴り声がきこえた。
「騒ぐ奴は容赦なく撃つ!分かったら全員そこに座れ!!」
ハッとして、撃たれた人の方へ駆け寄った。
「聞こえますか!?返事してください!!」
呼びかけたが、目は半開きのまま何の反応もなかった。
まさか……
撃たれた場所を見る。
心臓の真上。大量に出血していた。
脈も、なかった。
心臓マッサージ…?
でもその心臓から大出血している。
どうしたら……いいの……?
自分の体が、ガタガタと震えはじめた。
今さっきまで、ほんのさっきまで、
立っていた…喋っていた…生きていた…
なのに、こんなにも一瞬で…──?
「君は止血を!AEDを持ってくる!」
誰かの声で再びハッとした。
心臓が止まっていたことで絶望し、蘇生をあきらめようとしていた。
急いでハンカチで傷を押さえる。
止まって!!お願い!止まって!!!
必死で願ったが、おびただしい血は止まることもなくハンカチを真っ赤に染めた……
犯人はイライラしながら
「そいつはもう死んでる!放っておけ!お前らもあっちへ座れ!!」
そう怒鳴りながら、私の腕を掴んで引きずった。
嘘……亡くなった…?
さっきまで生きていた人の身体をぽつんと放置して、ひとかたまりに集められた人質。
こんなに沢山の人がいる中、たった一人、誰にも蘇生を試みてもらうこともできずに、ただそこに横たわっていた。
ふと、亡くなったと聞いた淳くんを思い出した。
結局、あのときなにがあったのかもわからないまま。
──…あなたの最後も、もしかして独りぼっちだったの?
犯人は人質の手を紐で後ろに結んだ。
そして、スーツケースにどんどんお金が詰められ、逃走する準備ができたようたった。