【ごちゃまぜ】SHORT STORY【ヒロアカ】【鬼滅の刃】
第3章 命短し恋せよ乙女!【 天喰環 】
は、とにかく人付き合いが得意な少女だった。
明るくて元気で、誰とでもすぐに仲良くなれる。
初対面だろうが、他科のクラスだろうが関係ない。
1年A組の友人たちはもちろん、B組の物間や拳藤とも気軽に遊びに行くほどのコミュ力おばけ。
そんな彼女には、ひとつだけ――今まで縁のなかったものがあった。
恋愛。
誰かを好きになったことが、一度もなかったのだ。
―――だが。
その日。
は、人生で初めて恋をした。
***
廊下に、大量のプリントが散らばっていた。
「うぅ……最悪……」
両手いっぱいに抱えていた書類を、盛大にぶちまけたのだ。
しゃがみ込み、今にも泣きそうな顔で一枚ずつ拾い集めていると――
ふいに、目の前へ大きな手が差し出された。
「……はい。落としたよ」
「あ、ありがとうござ――」
顔を上げる。
そこにいたのは、3年生の男子生徒だった。
眩しいほどの笑顔――ではない。
むしろ、どこか自信なさげに視線を泳がせている。
それでも、拾い集めたプリントを丁寧にまとめて、こちらへ差し出してくれていた。
「これも……」
「あ、はい……」
受け取る際、指先がほんの少しだけ触れた。
その瞬間。
の動きが止まった。
黒髪の隙間から覗く、驚くほど綺麗な目。
そして、少し小さくて、どこか優しい声。
腕に抱えていたノートの表紙に刻まれた文字が目に入る。
――『天喰』
「…………」
心臓が、跳ねた。
ドクン、と。
今まで経験したことのないほど大きく。
その人が、ただそこにいるだけなのに。
周りの景色が急に遠くなって。
世界の中心が、目の前の彼だけになった。
「……大丈夫?」
「…………はい」
返事をしたものの。
の頭の中は、それどころではなかった。
――何、この人。
――え、待って。
――好き。
それはもう、驚くほど一瞬だった。
「じゃあ……俺、これで」
「あっ――」
環が立ち去っていく。
はその背中を見つめたまま、数秒固まっていた。
そして――
「………恋だ」
ぽつりと呟いた直後。
「………恋だ!」
拾ったプリントを抱え直し、職員室へ向かって全力疾走した。