【ごちゃまぜ】SHORT STORY【ヒロアカ】【鬼滅の刃】
第2章 8月のカタストロフィ【 煉獄杏寿郎 】
ミーン、ミンミンミン――……
蝉の声が、今日も変わらず夏空に響いている。
午前9時。
ひんやりと冷房の効いた社会科準備室。
日めくりカレンダーは、8月8日。
「………っ」
煉獄は、を強く抱き締めていた。
「先生……?」
不思議そうに見上げる。
「どうしたんですか?」
「…………」
煉獄は答えなかった。
ただ、確かめるように彼女の髪に触れ、その身体を腕の中へ抱き寄せる。
「先生……?」
もう一度呼ばれて、ようやく煉獄は笑った。
「……いや。何でもない」
けれど、その笑顔はどこか苦しそうだった。
の頬に触れる指先が、ほんの少し震えている。
「……君が、ここにいてくれてよかった」
「?」
が首を傾げる。
煉獄は答えず、ただ彼女を抱き締めた。
強く。
二度と失うまいとするように。
その頬を、一筋の涙が伝った。
「先生……泣いてる?」
「……ああ」
煉獄は目元を拭うこともせず、静かに笑った。
「嬉しいんだ」
「嬉しいのに、泣くんですか?」
「そういうこともある!」
いつもの明るい声。
けれど。
その腕だけは、決して緩まなかった。
「……今度こそ」
「え?」
「いや……」
煉獄は一度だけ目を閉じる。
脳裏を過ぎるのは――
何度も見た、同じ光景。
何度も聞いた、同じ悲鳴。
何度も腕の中から消えていった、小さな体。
そして。
何度目か分からない8月8日の朝。
煉獄はゆっくりと目を開けた。
「……今度こそ、君を守る」
には、その言葉の意味が分からない。
ただ、いつもと少し違う先生の表情を見つめていた。
窓の外では、蝉が鳴いている。
今日もまた。
何も知らない彼女と。
何も知らないふりをする彼。
二人にとっての、8月8日が始まる。
――何度目かの。
【8月のカタストロフィ】