第7章 間章『第三者の観測』前編
午後二時四十分。
帝都大学理工学部、第十三研究室。
「──現場に残っていたのは、これだけか?」
「ああ」
草薙俊平は、机の上へ一枚の写真を置いた。
湯川はそれを手に取り、しばらく眺める。
「鑑識は?」
「まだ詳しい結果は出てない」
「なら、それを待てばいいだろう」
「待ってられないから来たんだよ」
「それは警察の都合だ」
「そう言うなって」
「僕は便利屋じゃない」
「知ってるさ」
「なら──」
言いかけて、
湯川が壁の時計を見る。
午後二時四十一分。
「…………」
草薙は、特に気に留めなかった。
「で、こっちが現場の見取り図」
もう一枚資料を差し出す。
「被害者が倒れてたのが、この位置」
湯川が目を落とす。
「窓は?」
「施錠されてた」
「内側から?」
「ああ」
「出入口は一つ?」
「そうです」
草薙の隣にいた内海薫が答える。
「防犯カメラも確認しましたが、事件の時間帯に出入りした人物はいません」
「なるほど」
湯川が資料へ視線を戻す。
数秒し沈黙する。
「…………」
また、時計を見る。
時刻は午後二時四十三分。
「…………」
今度は草薙が気づいた。
「湯川」
「何だ?」
「さっきから時間を気にしてないか?」
「何故?」
「時計ばっか見てるから」
「時間を確認することに何か問題が?」
「問題はないけどさ。約束でもあんのか?」
「ない」
「じゃあ何で──」
「草薙さん」
少し離れたところから声がした。
三人が振り向くと、
机に向かっていた栗林宏美が資料を揃えながら言った。
「今日は火曜日ですからね~」
「火曜日?」
「ええ」
「栗林さん」
湯川が呼ぶ。
「何でしょう?」
「余計なことは言わないでください」
「僕、まだ何も言ってませんけど」
「…………」
「…………」
草薙の眉が少しだけ上がる。