第5章 『識別る』
木曜日。
午後二時四十一分。
私は、いつもの場所に譜面台を立てた。
「…………」
ふと、理工学部棟を見上げる。
いくつも並ぶ窓の、その中の一つ。
先日までなら、
どれが第十三研究室なのかなんて知らなかった。
でも、今は分かる。
「あそこか」
小さく呟く。
先生はいるだろうか、窓は開いているだろうか。
──そんなことを考えて。
「……何考えてんだろ」
すぐにやめた。
私はいつも通りフルートを組み立てる。
今日は長めに吹く、そう宣言した。
別に約束ではない。
先生だって「報告する必要はない」と言っていた。
だから、別に、先生のために吹くわけではない。
「…………」
息を吸って、最初の音を出した。