第2章 2
部屋に戻って来ると、あなたは夏の良い天気の下、半袖と短パンになってバルコニーに出る。
ドリンクを準備しビーチチェアに寝そべる前に、二階からさっきの庭を見た。
「わーすっごい綺麗になった。私天才~」
一人でフェンスに寄りかかり、成果を褒めたたえていると。
隣のバルコニーの柵に男性がちょうどいたことに気づいた。
「うわっ」
あなたは素で驚き、目が合ってしまう。
彼は隣人のエナードだった。
寝起きなのか金髪に寝ぐせがあり、コーヒーカップを片手にこっちを見ている。
「あっ……。どうもー、おはようございます」
「……おはようございます」
彼にじろっと全身を見られた気がしたが、すぐに視線を外に戻された。
さすがにあなたも気まずくなり、でも今すぐに部屋に入ることもしづらかった。
「エナードさんって、自炊とかするんですか?」
「……はっ?」
突然プライバシー丸出しなことを聞いてしまい、あなたは焦る。
まったく親しい関係ではないのに。
汗が出ていると、彼の横目がこちらに向かった。答えるのは相変わらず遅い。
「しません。あなたは?」
「私はしますよ~」
「でしょうね」
なにその答え。
そう思っていると、こちらに向き直った彼の、朝のけだるそうなシャツ姿にドキっとした。
「帰宅する頃に、廊下からご飯の匂いがするので」
「……あっ。すみません。匂いが漏れてましたね」
あなたが焦り気味に頭をかくと、彼はこう続けた。
「いい匂いですよ」
それだけ言って、珈琲を口に含む。
たった一言だったが、あなたはとても嬉しくなった。
「へへ。自炊が好きで……」
「じゃあ」
そう言って彼は踵を返し、バルコニーのドアが開けられ、ばたりと閉まった。
一人残された感はあったが、あなたは夏の日差しとは異なるふわっと温かな気分で、ビーチチェアに寝そべり、鼻歌を歌った。