第1章 1
あなたは最近、三階建てのアパートメントに越してきたばかりだ。
一階の半分を所有する管理人の女性に、ルールなどの説明を受けていた。
「じゃあさん。清掃は週ごとに持ち回りで、自分の階の階段や廊下をお願いします。窓は時々でいいですから」
「わかりました」
「あとこの夏の時期は草むしり順番にやろうってことになって。難しいかもしれないんだけど、あなたの隣人の不愛想な男の人と――」
女性が嫌そうに話したとき、すぐそばのアパートの玄関扉から、チャラついた若い男性が入ってきた。
バンドマンのようなパンクな服装で、香水の強い香りも漂ってくる。
「あらこんにちは」
「こんにちはー」
管理人女性は眉をひそめて彼を呼び止める。
「あの、ちょっといいですか。夜遅くまで音楽がうるさいんですよね。もう少し下げてもらえます?」
「え? …でも管理人さんとこのお子さんの遊ぶ声も相当うるさいっすよ。お互い様じゃないすかねー」
彼は階段を上がりながら振り返り告げた。
そしてあなたに対し、軽くにこっと「こんにちは」と微笑んだので、あなたも挨拶を返した。
若者の姿がなくなると、女性は明らかに腹立てた様子だった。
「なによあれ、むかつくわ~っ。…まあいいわ、いつものことだし。……あっそうだ、さっきの話の続きなんだけど、さんの隣は高齢の女性だからアパートのことはできないと思うのでね。もう一人の気難しいあの人とできれば協力してくださいね」
「あっはい。わかりました」
あなたは素直にそう答え、彼女と別れてから二階へと階段を上っていった。
自分の住居の前で鍵を用意していると、エレベーターの扉がちょうど開いた。