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キセキ

第11章 一通の手紙


【The letter filled with love】

お母さんが、死んだ

それは突然だった
交通事故
夏のある日に起きたことだった

お母さんが死んで、
 お葬式があった
お葬式は、あっという間に終わった
それは、どこか遠い国の人がなくなったように
ふわふわとした気持ちのまま過ぎていった

そのふわふわは
その後
 学校に行っても
友達と話をしていても
先生の話を聞いていても
習い事のバレエをしていても

ずっと続いていた

まるで水の中にいるような感じ
耳は健康でも 音もよく聞こえない
 目は見えていても ぼんやりとしている
おかしな感じだった

たまにお母さんの夢を見た
 夢の中ではお母さんは優しくて
私の頭をそっとそっと撫でてくれた
  テストが良く出来たねと褒めてくれた
バレエでもうすぐトゥシューズだねと言ってくれた
私は
「うん」と
笑顔で言うのだった

ぼんやり
 ぼんやりと
時間を過ごしていて
たまに夢でお母さんと会って
私の毎日はそうやって過ぎていった

ある時
 家への帰り道
その日は初めて鉄棒で逆上がりが出来た
クラスで一番最後だったけど
がんばって、がんばって
 私はやっとできたのだった
一回できればかんたんだった
 なんで今までできなかったのだろうと思った

その日はぼんやりしていなかった
 目も耳もはっきりしていた
私は走って大急ぎで家に帰った

玄関の扉の鍵がなかなかあかない
 ガチャガチャと鍵を合わせて

ああ!やっと開いた!

「お母さん!
  まいちゃん鉄棒できたよ!!」
私は大きな声で言った!

・・・ 家は黙っていた

私はキッチンに行った
「お母さん!」

ベッドルーム
「お母さん!!」

トイレ
「おかあさ・・・ん」

みんな静かだった

お母さんの笑顔はなかった

エプロンを付けて
 おやつを作って待っていてくれたお母さん
逆上がりが出来て
 良かったねとなでてくれるはずだったお母さん

お母さんの声も
 においも
どこにもなかった・・・

私は急に涙が止まらなくなった
 なんどもなんども鼻水をすすり上げた
大きな声で泣いていた

どんなに 泣いても
 お母さんはいないのだ

お母さんはいないのだ
もう、いないのだ
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