第3章 Lazy Ex
「教えた電子タバコ、どうだった?」
昼休みの終わりがけ、
会社の最寄りの喫煙所で上司に声をかけられた。
「めっちゃ調子いいっすよ。紙巻きに戻る気なんて全くなさそうです」
家の灰皿の横には
あいつの家から持って帰ってきた紙タバコが
何食わぬ顔で並んでいる。
見えないことをいいことに、サラッと都合のいい嘘を並べる。
「だろ。
あ、電子タバコでも吸わないやつには匂いバレるから気をつけろよ」
「奥さんすか?」
「はは、あいつマジで鼻良すぎなんだよ。お前も彼女にバレんなよ」
「あー、よく一緒にいるやつ、喫煙者。
と言うか、いまだに紙タバコなんで」
彼女?彼女じゃないだろ。
俺が振ったんだから。でも、よく一緒にいるヤツなのは確かだ。
正確にはよく会いに行くやつ。いや、よく、でもないかもしれないけど。
言い訳並べて会いに行ってしまうやつ。
「まあ、お前は何だかんだ上手く生きてるよな」
上司は笑いながら煙草……もとい電子タバコを咥え直す。
「なんでですか」
「顔もいいし仕事もできるし、人当たりもいい。モテるだろ。
選ぶやつなんだよ、お前は。
選ばれなきゃいけない、相手の顔色伺い続けてる俺とは違うよ」
適当なことを言う上司に、俺は曖昧に笑って流した。
選んでるつもりなんて一度もない。
むしろ、選ばれなかった。