【H×H ミルキ】夏の大作戦 〜軽井沢に行きませんか?〜
第6章 恋のバトンタッチ
「イルくん、その……」
しかし、イルミは振り返らなかった。
長い黒髪を揺らして遠ざかっていく背中を見つめたまま、穂乃果はその場に立ち尽くす。
(……私、何を言おうとしたんだろう)
引き止めて、どうするつもりだったのか。自分でも分からなくなって、急に居た堪れなくなった。
不意に、イルミが足を止めた。
「どうしたの?」
穂乃果を促すように、半身だけで振り返る。
「あっ……いえ、なんでもないです」
「おいで」
言いながら、片腕をわずかに動かす。
(……ッ!)
その仕草に穂乃果は、思わず息を飲んだ。
けれどイルミは、何事もなかったように腕時計へ目を落とした。
「早くおいで。急がないと遅れる」
「あ、はい!」
慌てて小走りになった穂乃果に、鋭く声が落ちる。
「約束したんだろ、ミルキと」
「……え?」
駆け出した足がもつれる。
「あッ……!」
つんのめりかけたところで、どうにか踏みとどまったものの、胸の鼓動は収まらなかった。
そこへイルミが戻ってきた。
「はあ……。いきなり何も無いところで転ばれたら、流石に俺だってどうにも出来ないよ」
「す、すみません……」
「穂乃果さ、ちょっとぼんやりしすぎ」
「でもっ……な、なんで?」
イルミは返事をする代わりに、呆れたように穂乃果をしばらく眺めていた。
「本当に何も気づいてないの?」
「……?」
「まあ、いいや。ほら、到着」
イルミは木立の向こうに見えるモニュメントを指した。だか、穂乃果は視線をそちらに移せない。
「あの……イルくんは、ミルキくんとお知り合いなんですか?」
「知り合いっていうか……」
イルミが答えかけた、その時だった。