第11章 イカれた世界
椿の肩がピクリと動き、強張っていた体が少し柔らかくなった。
「もう呪霊は祓ったで。」
その声に椿は少し顔を上げた。
しかし目にはまだ恐怖が色濃く残り、噛み締めている唇は震えていた。
「…嘘…また私を殺すんでしょう?」
憎しみと恐怖が入り混じった目が直哉を捉えた。
直哉はそんな椿を見て目を細め、そっと指先でまつ毛に溜まっている涙を拭った。
涙を拭っていたその手は脇腹に伸びて、椿の体を起こした。
そして抱え込むように、椿の体を自分の腕の中に収めた。
「……『もう二度』と、そないなことせぇへん。」
ーあんなん、タチの悪い夢や。
自分が最愛の恋人を手にかけた。
あの日から毎夜夢に見る。
夢だと思っているのに、現実の椿は、その直哉を知っているかのように怯えている。
明らかにこの状況を夢と重ねていた。
椿は直哉を振り払おうと、抱き締められた腕の中で体を動かしていた。
その椿をさらに強く抱き締める。