第10章 結婚しない
「本当に発作が起きなかったんですか?」
椿の執務室で、昴は疑わしい目を向けて椿に聞いた。
そんな昴をチラッと横目で見て、椿はまたパソコンに目を向けた。
悪夢の全貌を打ち明けたのは昴だけだった。
彼には直哉を警戒して欲しかったし、何より昴の命が救えたことは、椿にとって悪夢を変えられる慰めになっていたからだ。
だけどそんな昴すら、椿を精神疾患だと思っていることを彼女は知っていた。
別に昴が信じていなくても気にしていない。
椿だってこんなこと、自分の頭がおかしいせいだと疑っているのだから。
「ええ、悟の側で眠ると悪夢を見ないの。」
それでも自分にとっての事実だけを昴に伝える。
この男が、毎夜発狂する自分に疲弊していたのも事実だからだ。
それで昴の気が楽になるのなら、慰めの言葉くらいかけてあげようと思った。
だけど昴は、そう言った椿に目を細めた。
昴の不満そうな顔を見て、椿ははて?と肩肘を机に置いた。