第9章 よくない変化
椿は最後の最後まで、直哉が自分を殺すとは思っていなかった。
彼の浮気も遊びが殆どで、最後は自分に戻ってくると信じていた。
そう椿が信じていたのは、彼女が世間知らずだっただけでは無い。
こうして椿を腕の中に抱き、穏やかな顔で椿を見る直哉に愛情があったと知っていたからだ。
いつから彼は椿が疎ましく、殺したいほどに邪魔になったのだろう。
椿は目の前の三文芝居を見ながら、そんな事を考えていた。
頭のてっぺんから、つま先まで夢の中の感情が支配する。
直哉を愛していて、彼が全てだと全身で叫んでいるようだった。
気分の悪いその感情に、椿は吐き気がする。
なのに夢の中の体は、直哉に口付けを求めて彼の首に手を回している。
いつもならこの後に、自分が殺される場面に切り替わる。
しかし、いくら待っても、そんな光景には変わらない。
椿は、愛を語り合う二人を見ながら、夢から醒めるのを感じた。
悪夢で目が覚めるよりも、ひどく気分の悪いものだった。