第1章 口喧嘩は日常
「起きてください、田中さん。朝ですよ」
私の仕事は白目を向いて口を半開きにして恐ろしいぐらいに寝顔がドブスな雇い主を起こすことから始まる。
「いい加減起きてください」
ちなみにこの人なかなか起きない。
毎日毎日なんでなかなか起きないんだと思いながら腕時計を見る。
そろそろしないとこの人の迎えが来てしまうのだからその前に朝食を食べさせなければならない。
「起きてください。起きないと鼻にブラジリアンワックス突っ込みますよ」
樹「それやったら普通に解雇だからなお前」
さっきまで白目を剥いて寝ていたくせに眉間に皺を寄せながら雇い主が目を覚ます。そして私の顔を見て溜息をつきたそうにした。
樹「美人に起こされたかった」
「起きやがれクソ田中!」
樹「雇い主を呼び捨てにするな!クソどチビ!!」
「朝から叫んだら血圧上がりません?」
樹「誰が朝から叫ばせてるんでしょうね!?解雇すんぞ!!」
「私の本当の雇い主はあつこさんなんで」
樹「クソ!!」
自己紹介が遅れました、月永叶といいます。
現在私はこの顔だけは良いヤンキーみたいな男の家政婦をやっています。前職はOLでしたが上司からのセクハラ&パワハラが酷くて、上司の顔面に辞表届を叩きつけて罵ってから辞めてやった。
そしてこの私の雇い主の名前は田中樹。
実は大人気アイドルSixTONESのメンバーらしい。
らしいと言うのは私がアイドルに全然興味が無くて全然詳しくないから、人気なのかとかそんなのよく知らないのである。
「朝ごはん用意してるんで食べてくださいね」
樹「欲しくねぇんだけど」
「私、あつこさんに田中さんが食べようとしない場合は口に突っ込んでも良いって言われてるんですよ。どうします?喉奥まで突っ込んであげましょうか?」
樹「食うよ!自分でちゃんと食うよ!!」
「ていうか毎回このやり取りしてますよね?いい加減学習してくださいよ、もやし」
樹「さり気なく悪口言うのやめろ。絶壁」
「セクハラで訴えていいですか?」
樹「解雇してもいいですか?」
「いいから早く食べてくださいよ。マネージャーさん迎えに来ますよ」