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緋色の誓い

第7章 新たな道標



聞こえている。

誰なのかも分かっている。

それでも振る。

「斗亜」

二度目。

今度は少し近い。

竹刀を振り上げたまま、

「来るな」

低く吐き捨てる。

そのまま振り下ろす。

軌道がぶれる。

踏み込みが流れる。

膝が畳へ落ちる。

それでも立ち上がる。

また構える。

「もうよい」

静かな声。

斗亜は歯を食いしばる。

「うるせぇ…」

振り返らない。

「今日は終わりでござる」

「終わってねぇ」

「斗亜」

「終わってねぇって言ってんだろ!!」

叫び声が道場へ響く。

肩が激しく上下する。

息が続かない。

竹刀を握る右手は小刻みに震えていた。

「俺は…」

言葉が続かない。

手拭いの下で傷が疼く。

「俺は鈍ってねぇ!!」

叫ぶと同時に踏み込んだ。

一直線。

一直線すぎた。

剣心は静かに竹刀を構える。

避けない。

逃げない。

真正面から迎えた。

パァンッ!!

竹刀同士がぶつかる乾いた音。

だが、斗亜の竹刀はそこで止められた。

力ではない。

角度。

重心。

全てを奪われる。

剣心が一歩踏み込む。

斗亜は押し返そうとする。

動かない。

さらに一歩。

竹刀が弾かれる。

握力が抜ける。

体が泳ぐ。

その一瞬、剣心の竹刀が斗亜の肩口でぴたりと止まった。

いや、止めたのではない。

そのまま続ければ、一本では済まなかった。

それが分かる一太刀だった。

斗亜は動けない。

「何でだ」

掠れた声。

剣心は竹刀を下ろさない。

「斗亜」

「離せ!!」

斗亜は無理やり弾こうとする。

腕が上がらない。

息が吸えない。

視界が白く染まる。

膝から崩れ落ちる。

竹刀が手を離れ、コトリと板間へ転がった。

「はっ…」

浅い呼吸だけが繰り返される。

胸が苦しい。

喉が鳴る。

それでも立とうとする。

板間へ手をつく。

震える。

力が入らない。
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