第4章 因縁の残火
甲板にはすでに十本刀の兵がズラリと並んでいた。
剣心は逆刃刀を構え、斗亜は刀の柄を握り直す。
斎藤は牙突の構えでニヤリと笑う。
「派手にいくぞ。時間がねぇ」
「拙者たちが引きつけるでござる…左之のためにも!」
斗亜の胸の奥で、炎のような熱が燃え上がる。
「志々雄。絶対、止めてやる」
煉獄の砲塔が再び火を噴いた。
カァァァァァン!!
甲板が震え、戦いの幕が切って落とされる。
「決死の特攻ようこそ…と言いたいところだが、まだまだ甘ぇな」
志々雄は炎を背に、ただ楽しげに笑った。
その笑みの裏に潜む狂気は、海風より冷たく鋭い。
「緋村抜刀斎。あんたが俺の思考を読んで作戦を見破ったなら…」
志々雄はゆっくりと、わざとらしいほど誇張された動作で首を回した。
「その逆も然(しか)り。俺もまた、あんたの思考を読んで作戦を見破って当然…ってわけだ」
ニヤァッ、と口角を吊り上げ、剣心から視線を外す。
剣心も斗亜も、その視線の移動を見て凍りついた。
志々雄の視線の先の海。
左之助が木の切れ端に跨り、必死で煉獄に近づこうとしていた。
「左之助!?あいつっ!!」
「左之!!!」
斗亜が叫ぶより早く剣心が声を振り絞る。
志々雄の笑みがさらに深く、禍々しく歪む。
「お前らが囮だということは、既にお見通しなんだよ」
その瞬間、志々雄は右手を高く上げた。
「回転式機関砲、斉射!!」
キィィィィィンッ!!
重々しい金属音とともに、甲鉄艦両舷の機関砲が回転し始める。
斗亜の顔が引きつった。
「まずい!!!!!逃げろ左之助!!!!」
その叫びが届くかどうかだ。
だが左之助は、もう覚悟を決めていた。
「おらァァァァァァァ!!!!!」
彼は海面に拳を叩きつけた。
まさかの“水柱の防壁”が生まれ、機関砲の弾丸を弾き返していく。
キンッ!キンッ!ジャキィィンッ!!!
海面が鋼のように硬化し、弾丸を反射する異様な光景に、志々雄の兵士たちが動揺する。
左之助は振り返りもせず叫んだ。
「うおらァァァァァッ!!!!!」
右腕を引きしぼって握る炸裂弾を、渾身の全力で投げ放った。