第4章 因縁の残火
海面を割るように、鉄の塊が姿をあらわした。
黒光りする、巨大な艦。
その規模は、さっきの志々雄の船の比ではない。
まるで海上に浮かぶ城だ。
四人は言葉を失う。
「驚いてくれたようだな」
不意に、海上からスピーカーのように声が響いた。
煉獄の甲板に、白煙を背に志々雄が立っていた。
「この大型甲鉄艦“煉獄”には、全財力の五分の三をつぎ込んだ。もっと驚いてくれなきゃハリが無ぇがな」
志々雄は、涼しい顔で狂気じみた笑みを浮かべる。
「あいつ…どこであんなものを手に入れやがった…」
斗亜が奥歯を噛みしめる。
巨大な砲塔がこちらに向き、その影が海面を黒く染める。
「お前ら、“斬鉄”は出来るか?」
志々雄の問いは挑発そのものだ。
「できる!!」
斗亜が胸を張って叫ぶ。
「胸を張って言うな…ただし、海中でなければ…作戦変更でござるな…」
剣心は深い溜息を吐きながらも、斗亜の肩を軽く叩く。
「左之。拙者と斗亜、そして斎藤で敵の銃砲を引きつける」
「はぁ!?おい剣心」
「そのスキにお主は小舟を探して迂回し、炸裂弾で敵艦後方の機関部を破壊してくれ」
左之助の反論を押し切るように、剣心は迷いなく指示を飛ばす。
パァンッ!!
突然、煉獄から砲声が轟いた。
海面が裂け、炎と水柱が空へと駆け上がる。
「いくぞ!!!!」
剣心の声が風を切り裂き、三人は迷わず海へ飛び込んだ。
ザバァァァァァンッ!!!
冷たい海水が全身を包む。
斗亜は水中でもがきながら、必死に水面へ顔を出した。
「ゲホッ…うぉっ!!海水飲んじまった…!」
鼻に抜ける塩辛さに咳き込みつつ、甲鉄艦の縁に手をかける。
ごうっ!!
頭上で砲弾が唸り、斗亜のすぐ横の海面に着弾した。
爆風に煽られながらも、斗亜は歯を食いしばり、全身の力を使って甲鉄艦へよじ登る。
ズバァッ!!!!
甲板に飛び乗った瞬間、全身から水が跳ね散った。
「っはぁ…やっと上れた…!」
剣心と斎藤も、わずか数呼吸の差で甲板に滑り込む。
海風が強く吹き抜け、煉獄は獅子のように唸り声をあげて進む。