【ヒロアカ】Until You Live【爆豪勝己】
第3章 【二巡目】
爆豪は透の肩をガシッと掴み、出口へ引きずるように歩き出す。
(よし――これで終わりだ)
爆豪は胸の中で、固く冷たい息を吐き出した。
一巡目。爆豪の誕生日に起きた透の死。自分に渡すはずだったプレゼントが、なぜか爆発したという悪夢のような現実。
(今回は俺が最初から最後まで張り付いてた。何も買わせなかった。これで、運命は変わったはずだ――)
ずっと張り詰めていた肩の力が、ほんのわずかに緩む。この買い物を何事もなく終わらせる。それだけでいいはずだ。
透が爆豪に引きずられながら、老婆に手を振りかえした。
——その老婆の背後で。
オレンジ色の滑らかな表面を伝ったアロマウォーターの水滴が、重力に従ってじわじわと下へ流れ落ちていた。
そして、その一滴が。
ストーンの下部にへばりついた、不格好でゴツゴツとした灰色の部分へ、ポトリと滴り落ちた。
水が触れた、その瞬間。
シュワァッ……!
灰色の石が、まるで生き物のように激しく発泡を始めた。急激な熱を帯びながら、白い煙がブクブクと猛烈な勢いで湧き出す。
「あら……? やだ、なにこれ……?」
何も知らない老婆が、突然カウンターの上で激しく煙を吹き出し始めたストーンを見て、困惑の声を上げた。手に取ろうと手を伸ばしかけ、その異変に戸惑っている。
「……待って、爆豪くん」
透の目が、その小さな違和感を捉える。
爽やかな柑橘の香りを一瞬で塗りつぶすように、ニンニクと硫黄が混ざり合ったような強烈な異臭が店内に立ち込める。
「おばあさん、触っちゃダメ!!」
透が爆豪の手を振り払い、老婆のもとへ猛ダッシュした。
「は……!? おい、水無月!?」
背後へ走る透を追いかけようとした爆豪の鼻腔を、不快な異臭が突いた。
爆破の個性を扱う爆豪の野生の勘が、脳内で狂ったように警鐘を鳴らす。
(なんだこれ……!? 香水じゃねぇ、可燃性ガス……!? なんであの石からガスが出てんだ……!?)