第2章 パーティと隅っこ 後編
翌日の朝。
えっ……まって。
わたし昨日……しょ、初対面のひとに、なんかすんごい迷惑かけてなかった……?!
覚醒と同時に、頭痛と現実が一気に押し寄せてきてシシィはうめいた。
のろのろと支度して、色んな意味で死にそうになりながら寮の共有スペースに降りると、出来たばかりの友達が数人、学内の目を引く男子達の話で盛り上がっていた。
「うちらのクラスのほら、ゼラくん、だいぶ好きかも」
「あーわかる、あの人すごいノリいい」
「名前知らないけど食堂でバイトしてる人もかっこいい」
一人がふと言った。
「なんか、冬系魔法の専攻にめっちゃ上品な子いない? 黒髪の……」
「あ! ノルバート・ヴェルツくんでしょ 推しです」
「もうフルネーム覚えてんのさすがか」
「でもまだ情報が少ないの! めちゃ勉強できるらしいけど」
パーティの余韻だろうか、みんな少しテンションが高い。
「へえ、私も知らないや 頭いい子なんだ」
そう言った途端、なぜか友達の一人が困惑した目をシシィに向けた。
「まって」
「? なに?」
「いやいや、聞くか迷ってたけどさ」
「シシィ、昨日まさにその噂のノルバートくんと喋ってた……よね? 花火の時声かけようと思ったら一緒だったから遠慮したんだけど、あれ、見間違い?」
「へ」
シシィが固まる間にも、場はすっかり盛り上がってしまった。
「何ーーッ?!?!」
「シシィ!どういうこと!」
「なに話したの?! どんな子だったの?!?」
シシィはしどろもどろになった。
「え?! いや、名前、聞いてなくて……てか、あ、あんまり、……ほんとべつに、挨拶くらいしかしてない、から……」
冷や汗たらたらで誤魔化しながら、シシィは昨日の出来事と今聞いた情報を必死で照らし合わせ始める。
あの人が、噂になってる、ノルバートくん……?
た、たしかに、かっこよかった気は、する。する……けど!
それよりそんな人にわたし、昨日……何した?!
思いっきりもたれかかって笑ってた気がする。たぶんわたしから踊りましょって言った。そのあと、眠くて何度か起こしてもらってた覚えもある。
ちょっとずつ思い出しては変な声が出そう。
この場で正直に白状なんてできるわけがなかった。