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閉店屋の恋は進まない

第14章 決別


◇◇◇

 同じ頃。シシィはそろそろ勉強を切り上げて寝る支度をしていた。
 勉強は制作に比べて圧倒的につまらなくて、試験前はむしろ生活が整う。でも、今日に限ってはすぐに寝つける気はしなかった。

 わたしの気持ち、ほんとは全然、即答しても良かったのにな。
 ……先に止められちゃったな。

 シシィは歯を磨きながら今日のことを思い出す。

 ノルバートは本当に真面目で、やさしい。ずっと隅っこの隣で見てきたのだ。今日のあの話を聞いても、その認識は特に崩れなかった。
 彼は自分と関わる上でのリスクのことまで気にしていたけれど、それだって彼が悪いわけではない。

 でも、ノルバートらしいと言えば、それはそう。

 シシィは今日何度目かのため息をつく。

 わたしが、すぐ相手に合わせちゃうのも知ってくれてるし、だからかも。

 シシィのそういうところを、彼はよく見ている。

 じゃあ、少し待ってから答えたほうが……ノルバートも安心してくれるかな。
 
 何回も同じところをブラシが往復している気がして、一旦考え事を切り上げようとした。
 でも、簡単には止まらない。


「正直、もうあまり未練はないんだ」

 ノルバートはああ言ったけど。

 うそでしょ。

 だって未練ない人の喋り方には、聞こえなかったし。
 たぶん、ずっと忘れたことなんかないんだ。

 家のこと。お兄さんのこと。

 もう会えない、ぺぺのこと。

 シシィはつぶやいた。

「普通に、犬好きなだけって思ってたけど、違うじゃん。辛いとこ隠すの、うますぎるよ……」
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