第14章 決別
十六歳も終わりの頃、長期休みで久々に実家に帰った時だった。
父は彼に告げた。
「ノルバート、今回の仕事は同行しなさい。初任務だ」
内容は国家要人たちの大掛かりな竜狩り。
今回は腕に自信のある者が集まり、竜が多く住む離島に初めて足を踏み入れるとのことだった。そこでの護衛を、ヴェルツ家は依頼されていた。
島へ出発する前日の夜。
「ぺぺ、おいで」
夕食の後、ノルバートは小さい頃から家にいる老犬を部屋に迎え入れた。
おやつをあげて、めいっぱい撫でると、ぺぺは大はしゃぎだった。
そのまま、一緒に眠った。
◇◇◇
「不安かい?」
翌朝の出発直前、兄、オズバートは気遣って声をかけてくれた。
「でも、ノルならやれるって父さんも思ったんだろう。だから大丈夫さ……ああでも、父さんって不器用なところがあるからね。業務の中で不安なことは僕にも相談してほしい。必要なら間に入るから」
遠慮するなよ、と兄はノルバートの肩を軽く叩く。
「……オズバート兄さん。ありがとう」
それから少しして、ノルバートがぽつりと尋ねた。
「……すごく変な事を尋ねるんだけど」
「なんだい?」
「兄さんが……もし竜や人魚と本当に仲良くできるとしたら、どんな話をしたい?」
「ええ? 急にどうしたんだ?」
兄は不思議そうに聞き返してから、そうだな、と窓の外を見た。
「空や…海の話を聞きたいかな。人間が行けないいろんな場所を彼らは知っているだろう?」
しかし答えてすぐ、彼は真面目な顔で弟に向き直った。
「でもね、あれらは人とは思考が違う。口の上手い種もいけれど、つい絆されると危険だよ。人間みたいな道徳のある種は結局は珍しいんだから。ノル、留学先ではちゃんと人間同士で固まって過ごせているね?」
「……学校は人間種多いから大丈夫だよ」
「ならよかった。ノルはなにかと好かれやすいから、そこだけちょっと心配なんだ」
「いや、まさか、もう飼育檻に絵本とケーキを差し入れたりなんかしないよ……!」
「あはは、引っかかれて大騒ぎだったよな。五歳の頃だっけ……僕もあれは忘れられないよ」
「うん、それくらいの時だね……」
兄弟が懐かしい話に花を咲かせるうちに、出発の時間になった。