• テキストサイズ

閉店屋の恋は進まない

第12章 君に伝えないといけない


「もう時間?」
「うん」

「……気をつけてね」
「ありがとう。いってくるね、シシィ」

 彼は最近、ギルドを連勤していた。
 事件のことはシシィも寮においてある新聞で知っていたし、人手が必要というのもそうだろうなとは分かっている。
 
 でも。

 ……怪我とか、しないよね?
 期末試験前に仕事詰めこんでるのも、無理してない?
 あと、寂しいんだけど。寂しいです。ほんとに。
 このところ、色々な言葉がずっとシシィの中で渦巻いていた。

◇◇◇

「対抗魔法を咄嗟に使えた事自体は大したものですけどね? なかなか大人でもできない判断です」
 白い壁に、厳しい声が響く。
「でもね、そもそも大学一年坊主が受ける案件じゃないんですよ! 普段の警備案件ならともかく犯罪がらみなんて」
 保健室教諭、バーリー先生の叱責に、ノルバートは狼狽えながら返した。
「その、ギルドからは推薦をいただいたのですが…」
「推薦もらえて嬉しくてもね、学生の本分は学業ですよ。試験前に利き手が呪われて保健室に一泊。この程度で済んだから良かったけれども」
「はい……」

 その時、ぱたぱたと走ってくる音がして、ベルが鳴った。少しした後、バーリー先生に案内されてシシィがお見舞いのあれこれを抱えて入ってきた。


「ノルバート! 手、大丈夫なの」
 シシィは一番にノルバートの手を覗き込んだ。ぱっと見はなんともなさそうだが、指先が少し透けて震えているのがわかる。
「あ、一晩しっかり解呪したら完治できるみたいだよ ……心配かけてごめん」
 彼がそう言うと、シシィは深く息をついた。
「ほんと、ほんとにびっくりしたんだから……重症じゃなくて、良かったけど!」
「うん……さっき先生にも注意されてしまった」
 ノルバートは多方面から怒られていつになくしおれている。

「それで、あの行方不明の件、解決したってニュースみたよ。今回の怪我と関係……あるんだよね?」
 シシィが尋ねると、ノルバートは順を追って説明した。
 行方不明者の中にとびきり魔力の強い種の子供がいて、自分で発動した固有結界から出れなくなっていたらしい。結果的に事件性はなかったものの、かなり危ない状態で救出に苦労したという。
/ 72ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp