第6章 氷の家
「オズバートと比べてはしまうだろうが、お前だって筋はいい。今回の結果がどうであれ、その事実は変わらない……私はそう考えているよ」
「……ありがとうございます」
「だから、ここで学びの機会が遅れるのは惜しい。裏口になるが……私の方で入学の手続きをした。外では受かったように振る舞いなさい」
「え」
時計の針の音だけが、やたらと部屋に響いていた。
「父、さん……? 何を、言って」
「ノルバート」
父は続けた。
「護りを生業とする我が家が、何を大切にするべきか、言ってみなさい」
「……強くあること、誇り高さ、勇敢であること……」
「そうだね、だが、一つ忘れている。
……ここなら任せられる、という信用だ」
「でも、不正なんてしたら、それこそ……!」
「知られることはないよ」
父は遮った。
「ノルバート。……正直者として今楽になるよりも、優先すべきものが我が家にはある。
ヴェルツ家の信用は、先祖代々が命懸けで積み上げてきた『この家なら確実に守る』という質のものだ。
だから……傷があってはならない。
実態を隠す嘘が嫌なのはわかるが、それならば今後の鍛錬で真実にしなさい。やれるか」
この件は口止めされ、兄にすら、相談できなかった。
自分がもっと……兄さんくらい有能なら、父にあんな事を言わせずに済んだのに。
父さん 本当にごめんなさい。
◇◇◇
「それから……」
「い、いやいやいや」
この時点でシシィには言いたいことがたくさんあった。
「そもそも裏口なんか……! 薦める方が悪くない?」
遮ったのは分かっていたが、言わずにいられない。
「ノルバートめちゃくちゃ真面目なのにそんな、嘘ついて生活とか、無理じゃん……」
ノルバートは少し目を伏せた。
「……真面目、なのかな」
「自覚ないの?!」
でも、たまに彼がちょっと信じられないほど自己評価の低いわけがこれでわかった気がする。
「……続き、あるんだよね」
「うん」
ノルバートは少し座り直し、再び口を開いた。