第3章 友達
シシィは最初こそ緊張気味だったものの、一旦ノルバートと友達になってみれば、わりとすぐに打ち解けてしまった。初対面があのパーティだったこともあり、二人きりになるのも早々にあまり抵抗がない。よそでも、少しばかり人を信じやすい節がある。
このあたりについて、当初シシィはあまり自覚がなかった。地元は知り合いばっかりの田舎、みんな見守ってくれる環境で、それでもやっていけたからだ。
今思うと……だいぶ怖いことしてた。わたし。
正直に言うと、完全に一人で自覚できたわけではない。
ノルバートが仲良くなり始めの頃に一度だけ、ものすごく言いにくそうに伝えてくれた言葉を、シシィはよく覚えている。
「その……まだ会って日の浅い人を信頼し切らないのは、別に、失礼じゃないと思うし……最初は少し警戒するくらいで……」
さらに、彼は付け足した。
「色々、変な人もいるから……自己紹介になってしまうかもしれないけれど」
その時はけっこうショックだった。
そんなに……危なっかしく見えてたんだ。
でも、実際そう。パーティの時にノルバートがきてくれなかったら今頃終わってるかも、わたし……。
珍しく本気の注意の気配を感じ、シシィはその後やや落ち込んでしまった。
けど、ちゃんと仲良くなった今。
シシィは、彼に少し言いたいことがある。
あなたに関しては、信用させにきてるのはそっちでは!?!
言えない。
言えないけど。
そんなシシィの視線に気づいてか、ノルバートがふっと振り返る。
そして薄水色の目を少し細め、視線を合わせて。
「シシィ、どうかした?」
……だから! そういうとこ!!!
咄嗟に目を逸らす。なんでもない! と答えながらすこし走って彼の後ろに回りこむと、彼は無理に追いかけてはこないで、身体だけを向けて微笑んだ。
……それ、怖がりの生き物……猫とかを、びっくりさせないようにする時の動きじゃん。てか、前に野良妖精に同じ近づき方してたじゃん!
こ、この人〜〜。
顔が赤いのを悟られないように手を頬に当てる。
友達、なんだってば。
しかし、まもなくそうも言っていられなくなることを、シシィはこの時、まだ知らなかった。