第1章 五条悟
【チョコレート】
任務報告を終えたロロは、教室の机に突っ伏していた。
「疲れた…」
「お疲れ様」
軽い声と共に、コロンと机の上にチョコレートが転がる。見上げると、五条がいつもの調子で笑っていた。
「ご褒美。ちゃんと頑張ってたじゃん」
「先生が珍しく褒めてくれた…」
「失礼だなぁ。僕、褒めて伸ばすタイプなんだけど」
そう言いながら、自分も包装を開けてチョコを一粒口に放る。カリッ。遠慮なく噛み砕く音が響いた。
「先生、味わわないんですか?」
「え?だってチョコは噛むものでしょ」
「もったいないです」
「じゃあ、ロロは?」
「ゆっくり食べます」
「ふーん」
「性格出ますね、こういうの」
ロロがゆっくり甘さを味わっていると、不意に頭へポンッと手が乗る。
「今日は無茶しなかった」
「え?」
「ちゃんと周り見て戦えてた」
軽い口調なのに、ちゃんと見ていてくれたんだと分かる。
「成長してるじゃん」
照れくさくて目を逸らすと、五条はまたチョコを一粒放り込み今度も迷いなくカリッと噛み砕いた。
「先生、本当に全部噛みますね」
「僕、せっかちだから」
「絶対嘘です」
「バレた?」
悪びれもせず笑う。
「ロロが『もったいない』って顔するのが面白くてさ」
「…からかいましたね」
「うん」
即答だった。ロロが呆れていると、五条は残っていた最後の一粒を差し出す。
「ほら、これはロロに」
「先生は?」
「教師は生徒に譲るもんでしょ」
「さっきまで全部食べてたのに」
「細かいこと気にしない」
そう言って笑う姿は、どこまでも自由だった。五条は教室を出る直前、振り返らずにひらりと手を振る。
「また疲れたらおいで。甘い物くらい、いくらでもあげるから」
その何気ない一言が、不思議なくらい安心できた。