SW異銀河から落ちてきた言葉の通じない謎の親子を保護しました
第4章 襲撃、それからタイムリミット
ガタガタと震えながら、黒く焦げた畳を見つめる星子の脳裏に、数ヶ月前の、あの静かで温かかった夜の記憶が鮮烈に蘇っていた。
それは初詣を終えてしばらく経った、ある日の夜のことだ。
星子は居間のローテーブルで、ディンにひらがなの読み書きと、最低限の簡単な算数を教えていた。
「ディン、これは『お』。さっきの『あ』と似てるから気をつけてね」
星子がスケッチブックにペンで大きく文字を書くと、ディンは黒いフードの奥でじっとそれを見つめ、大きな革手袋の手で鉛筆を驚くほど器用に握り直した。
正式なひらがなの形を、ゆっくりと、しかし力強い筆跡でノートに書き写していく。
算数の引き算のドリルを開いた時も、ディンは見事な集中力を見せた。
数字の意味を理解すると、驚くべき頭の回転の速さで、次々と正しい答えを導き出していく。
「すごい、大正解! ディンは本当に頭が良いね」
星子がパッと笑顔になって褒めると、ディンは少しだけヘルメットを傾け、地響きのように低い声で呟いた。
「……星子の、教え方が、良い」
拙いけれど、確実に増えていくディンの日本語。
コタツの中では、グローグーがサツマイモを食べてお腹いっぱいになったのか、「すぅ……すぅ……」と気持ちよさそうに爆睡している。
そんな穏やかな空気の中、星子はずっと心に秘めていた疑問を、そっと口にしてみた。
二人の名前を知り、少しずつ言葉が通じるようになって、もっと彼らのことを知りたくなったのだ。
「ねえ、ディン。二人は……本当は、どこから来たの? どんな場所に住んでいたの?」
星子の問いかけに、鉛筆を動かしていたディンの手が、ピタリと止まった。
居間に、ストーブのヤカンがシュンシュンと鳴る音だけが寂しく響く。
ディンはゆっくりと顔を上げ、黒いバイザーを星子へと向けた。