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201号室と202号室

第2章 誕生日



7月某日。深夜2時半。

梅雨が空けたばかりの湿った生ぬるい夜風が、なつの髪をふわりと揺らした。

ベランダに脱ぎ捨てられた突っかけサンダルに小さな素足を突っ込んだなつは、その場にしゃがんで慣れた手つきで、日付が変わったばかりだというのに何本目かわからないたばこを取り出した。

カチッとライターの擦れる音が鳴り、たばこの先端にオレンジ色の灯りが灯る。

「……っ、ふぅー……」

そう、ため息混じりに細く煙を吐き出す。
今日はなつの誕生日だった。

去年までは遠距離の彼が日付が変わったタイミングで、「なつ、おめでとう!」とLINEを送ってくれて、ふたりで通話をしていた。
だけど今年は違う。

__右手に持たれたスマホの電源ボタンを押す。


ベランダの暗がりで光ったスマホの画面には通知ひとつ来ていない。

「………っ、…はぁ……」

小さくため息をつく。

スマホのロック画面の彼だけは今日も笑顔だ。
口を大きく開けてくしゃっと笑ったその笑顔。

きっと画面外にいるであろう周りの人間たちも笑顔なんだな、と分かるような屈託のない向日葵のような笑顔。

「……っ」

思わず口元が緩む。
もし、その笑顔が自分だけに向けられたらと思うと思わず破顔してしまいそうになる。
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