【Dグレ】Twin Ray -灰の世界に響く歌- の短編集
第7章 【番外編】中身にご注意
中和薬が完成したのは、それから一時間ほど後だった。
最低でも二時間はかかると言っていたはずだが、神田に殺気を向けられ続けたコムイさんが、文字通り死に物狂いで作ったらしい。
私と神田は研究室の中央へ向かい合って立たされ、それぞれ透明な薬を飲まされた。
「最後に、二人で手を握って」
コムイさんが明るく言う。
神田が、露骨に嫌そうな顔をした。
「必要なのか」
「最初に薬を浴びた時も身体が接触していたからね。同じ条件を作った方が確実だよ」
私たちは仕方なく、互いへ手を伸ばした。
その横から、ラビが口を挟む。
「ユウ、必要以上に握んなよ」
「黙れ」
「戻るためなんだから、黙ってて」
「分かってるけどさ……」
差し出した大きな手に、見慣れた自分の手が重なる。
見た目だけなら、自分自身と手を繋いでいるようだった。
不思議な感覚に息を詰めた瞬間、掌の間から白い光が弾ける。
再び、身体の内側を強く引かれた。
足元が揺らぐ。
けれど、今度は床へ倒れる前に、誰かの腕が身体を支えた。
「ティファ」
目を開ける。
視界へ映ったのは、赤い髪と翠の瞳だった。
「……ラビ」
自分の声。
喉の奥では、ニルヴァーナが確かな鼓動を刻んでいる。
ラビはすぐには抱き締めなかった。
ほんの一瞬だけ、私の顔をじっと見る。
「……ティファ?」
「ええ。私よ」
「じゃあ、一応確認」
「まだ疑ってるの?」
「今日一日で慎重になったんさ」
ラビは真剣な顔で私を見つめる。
「検査終わったら、何食いに行くって話してた?」
「食堂のチキンでしょう? 朝から食べたいって言ってたじゃない」
「……よし」
次の瞬間、強く抱き締められた。
「戻ったぁ……」