【Dグレ】Twin Ray -灰の世界に響く歌- の短編集
第1章 【アレン番外編】それでも、君が笑うなら
その時だった。
食堂の入り口から、聞き慣れた声がした。
「ラビ、本当に行くの?」
「……行くさ」
ジョニーの不安そうな声と、いつもより低いラビの声。
アレンの指先が、カップの縁で微かに止まった。
リナリーはそっとアレンを見る。それから何も言わず、静かに立ち上がった。
「……飲み物取ってくるね」
気遣いだった。
「ありがとうございます、リナリー」
アレンが苦笑すると、彼女は優しく笑ってその場を離れる。
数秒後、食堂の入り口へラビが姿を現した。
いつものバンダナ。
いつもの軽そうな笑顔。
なのに、片方だけ覗く翠の瞳が、どこか落ち着かなく揺れていた。
ラビは食堂を見回し、アレンを見付けた瞬間、ぴたりと止まった。
空気が少し張り詰める。
ジョニーが察したように、そっと後退った。
ラビは数秒、その場で黙っていた。
やがて、覚悟を決めたみたいに、ゆっくりアレンの方へ歩いてくる。
ぎぃ、と椅子を引く音。
ラビは向かいへ腰を下ろした。
珍しく、すぐには喋らない。
アレンも何も言わなかった。
ただ、冷たい沈黙だけが二人の間へ落ちていく。