【Dグレ】Twin Ray -灰の世界に響く歌- の短編集
第5章 【番外編】騒がしい休日
「その手を、離しなさい」
声を低く落とす。
男の顔から、薄い笑みが消えた。
「彼女は、嫌だと言っているでしょう」
それ以上は言わなかった。
ただ、握る手へ僅かに力を込める。
旅暮らしをしていた頃。
こういう手合いは、嫌というほど見てきた。
引き際を知らない相手には、言葉を重ねるより、有無を言わせない方が早い。
「わ、分かった! 離せって!」
男が痛みに顔を歪める。
「次はないわ」
ぱっと手を離す。
男は掴まれていた手首を抱え、慌てて後ずさった。
「な、なんなんだよ、この女……!」
「行くわよ、リナリー」
私はもう、男たちを見なかった。
見る価値もないと、態度で示すように。
背後で悪態をつきながら、彼らが去っていく気配がした。
「……ティファ」
隣を見ると。
リナリーが、ぱちぱちと瞬きをしながら私を見上げていた。
「今の、すごく格好よかったわ」
「大袈裟よ」
「ううん、本当に。あんな風にびしっと言える人、なかなかいないもの」
リナリーは感心したように言ってから。
ふと、悪戯っぽく目を細めた。
「もしティファが男の子だったら、私、うっかり惚れちゃってたかも」
「……それは、どう反応すればいいのかしら」
「ふふ。褒めてるのよ」
リナリーが楽しそうに笑う。
私も、それをただの軽口として笑って受け流した。