【Dグレ】Twin Ray -灰の世界に響く歌- の短編集
第5章 【番外編】騒がしい休日
その頃。
そんな騒ぎなど知る由もない私とリナリーは、街のカフェテラスでのんびりと休憩していた。
「ふぅ。少し歩き疲れたわね」
リナリーが、温かな紅茶へ息を吹きかける。
「でも、楽しいわ。とこうして出かけられて」
「私もよ」
穏やかな午後の陽射しが、石畳へ柔らかく落ちている。
久しぶりに、何も警戒しなくていい時間。
――その時だった。
「やぁ、お嬢さんたち。二人だけ? 寂しくない?」
不意に、軽薄な声が降ってきた。
顔を上げる。
数人の男が、こちらへ近付いてくるところだった。
身なりは悪くない。
けれど、その笑い方には、妙に馴れ馴れしいものがある。
「よかったら、俺たちが案内しようか? この街のこと、詳しいんだ」
「こんな可愛い子たちが二人きりなんて、もったいないよ」
リナリーが、僅かに眉を寄せた。
「……結構です。私たち、待ち合わせがあるので」
「またまた。そんな冷たいこと言わないでよ」
男の一人が、なおも懲りずに手を伸ばす。
その指先が、リナリーの腕へ触れるより早く。
私は、その手首を掴み取っていた。
「――っ!?」
男が、ぎょっと目を見開く。
私は掴んだ手首を、静かに握り込んだ。
逃がさない程度に。
けれど、確かに痛みを感じる程度には強く。