【Dグレ】Twin Ray -灰の世界に響く歌- の短編集
第1章 【アレン番外編】それでも、君が笑うなら
悔しかった。
本当は、諦めたくなんてなかった。
誰にも渡したくなかった。
けれど、昨日のティファは残酷なくらい綺麗だった。
迷って、苦しんで、それでも自分の気持ちをちゃんと選んだ顔をしていた。
あんな顔を見せられてしまったら、もう止められるはずがなかった。
「……はぁ」
重たい息を吐き出した、その時だった。
「――アレン君?」
聞き慣れた声が頭上から降ってくる。
振り返ると、朝食のトレーを抱えたリナリーが、少し心配そうにこちらを見ていた。
「朝からすごい顔してる」
アレンは取り繕うように笑う。
「そう見えます?」
「見えるよ。思いっきり」
リナリーは向かいの席へ腰を下ろした。
数秒、静かな沈黙が落ちる。
やがて、彼女はそっと息を吐いた。
「……昨日、ティファと話したんでしょう?」
アレンは少しだけ目を伏せる。
誤魔化す気にはなれなかった。
「……はい」
リナリーはどこか切なそうに笑った。
「そっか……」
それだけで、全部伝わったらしい。
窓から差し込む雪明かりが、二人の間へ静かに落ちていた。