• テキストサイズ

【Dグレ】Twin Ray -灰の世界に響く歌- の短編集

第4章 【番外編】恋人のお弁当は、愛が硬い


隣を歩いていたアレンが、静かに目を逸らす。

「……ラビ、何か食べられるものを持ってきますね」

「優しさが染みるさ……」

「先に無理して食べなければよかったのでは」

「正論は今いらねぇ……」

その時だった。

「ラビ」

聞き慣れた声が、食堂の奥から届いた。

ラビの背筋が、ぴしりと伸びる。

振り返る。

が、少し急ぐような足取りでこちらへ近付いてきていた。

「おかえりなさい」

柔らかな声。

その一言で、ラビの顔が一瞬で緩む。

「ただいま〜」

先ほどまで空腹と顎の痛みに苦しんでいた男とは思えない声音だった。

アレンが、何とも言えない顔になる。

少し離れた場所では、神田が露骨に顔を顰めていた。

はラビの前で足を止めると、少しだけ落ち着かないように視線を泳がせた。

「……その」

「ん?」

「お弁当、どうだった?」

沈黙。

アレンが、静かに天を仰いだ。

神田は深々と溜息を吐く。

ラビは、数秒だけ固まった。

脳裏に蘇る。

箸の入らなかった白米。

兵糧丸と化した唐揚げ。

口の中いっぱいに広がった砂糖の甘さ。

けれど同時に。

蓋の裏に挟まれていた、あの小さな手紙も思い出す。

ラビは、にこっと笑った。

「美味かったさ」

即答だった。

神田が盛大に舌打ちする。

「お前、まだ言うか」
/ 72ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp