【Dグレ】Twin Ray -灰の世界に響く歌- の短編集
第4章 【番外編】恋人のお弁当は、愛が硬い
「……ありがとな、ティファ」
「ええ」
ティファは、ほっとしたように小さく微笑んだ。
「頑張って作ったわ」
「っ……無理。可愛いさ……っ!」
ラビが片手で顔を覆う。
「?」
意味が分からないティファは、きょとんとしている。
少し離れた席からその様子を見ていた神田が、眉間へ皺を寄せた。
「……待て」
低い声が落ちる。
「その顔、嫌な予感しかしねぇんだが」
「大丈夫さ。今回は弁当だし……前みたいに、鍋いっぱいの森が出てくるわけじゃねぇだろ」
「弁当箱の中に森が詰まってる可能性はあるだろうが」
「ユウ、朝から不吉なこと言うなよ!」
ティファが少し不安そうに弁当包みを見る。
「……やっぱり、迷惑だった?」
「違う違う! めちゃくちゃ嬉しいさ!」
ラビは即座に首を横へ振る。
そして、弁当包みを胸元へ大事そうに抱えた。
「任務が終わったら、ちゃんと食べる。楽しみにしてっから」
「……本当?」
「本当」
ティファの表情が、柔らかくほどける。
「じゃあ、気を付けて行ってきてね」
「ああ。行ってくるさ」
ラビは、嬉しそうに手を振った。
その横で、アレンだけが心配そうに弁当包みを見つめていた。
「……医務用品、少し多めに持っていきましょうか」
「縁起でもねぇさ!!」
神田の舌打ちだけが、朝の食堂へ乾いた音を立てて響いた。
数時間後。
任務は、思ったより早く片付いた。
街道沿いに潜んでいたAKUMAを破壊し、次の列車を待つまでの間、三人は人気のない廃駅で休憩を取ることになった。
割れた窓。
錆びたベンチ。
誰もいないホーム。
風だけが、乾いた音を立てて吹き抜けている。
その片隅で。
ラビは、膝の上に置いた弁当包みを前に、真剣な顔で固まっていた。