【Dグレ】Twin Ray -灰の世界に響く歌- の短編集
第1章 【アレン番外編】それでも、君が笑うなら
目を閉じると、初めてと出会った頃の記憶が蘇る。
血と泥にまみれ、左顔の痛みに焼かれながら、師匠に連れられて辿り着いたマザーの屋敷。
あの頃の自分は、壊れていた。
マナを呼び戻したこと。
マナを、あんな姿にしてしまったこと。
そして、自分の左手がマナを壊したこと。
その罪だけが、頭の中で何度も繰り返されていた。
師匠は、そんな自分を見捨てなかった。
優しい言葉はなかった。
ただ、食べろと言い、立てと言い、眠れない夜も黙って傍にいた。
――立ち止まるな。
――歩き続けろ。
マナの言葉を、もう一度自分へ返してくれたのは、あの人だった。
は、歩けない夜に泣いてもいい場所をくれた。
悪夢に耐えきれず、マナを置いていくみたいで怖いと零した時、彼女は否定しなかった。
ただ、自分も母を失ったあと、歩くのが怖かったと話してくれた。
忘れるためではなく、抱えたまま歩くのだと。
その言葉に、ずっと凍りついていたものが崩れた。