【Dグレ】Twin Ray -灰の世界に響く歌- の短編集
第1章 【アレン番外編】それでも、君が笑うなら
雪は、夜の間ずっと世界を塗り潰すように降り続けていた。
翌朝になっても、黒の教団の窓から見える景色は、凍てつくような白一色だった。
冷気を含んだ回廊はいつもより静まり返り、朝特有の慌ただしささえ、防壁の向こうの出来事みたいに遠く感じる。
アレン・ウォーカーは一人、まだ人も疎らな食堂の隅へ腰を下ろしていた。
手元のカップへ注がれた紅茶は、とうに湯気を失っている。けれど、それを口へ運ぶ気にはなれなかった。
(……ラビが、好き)
昨日。
雪明かりの差す回廊で、震えながら零されたの声が、今も鼓膜の奥で何度も反響している。
泣きそうだったのに。それでも決して逸らされなかった、あの瞳。
アレンは静かに目を閉じた。
胸の奥が、じりじりと焼けるみたいに痛かった。
きっと、この痛みはすぐには消えない。
それだけ長い間、自分は彼女を見続けてきたのだから。