【Dグレ】Twin Ray -灰の世界に響く歌- の短編集
第2章 【番外編】恋人の手料理は、森の味
「ほ、本当本当」
笑顔のまま頷く。
するとは、ほっとしたように小さく息を吐いた。
「よかった」
白いエプロンの裾を揺らしながら、嬉しそうに振り返る。
「まだたくさんあるの」
「……え?」
ラビの笑顔が、凍り付いた。
の視線の先。
大きな鍋の中には、皿の上に盛られたものと同じ、鮮やかな緑色のペーストがたっぷりと残っていた。
湯気と共に、強烈な香草の匂いがふわりと立ち上る。
ラビの顔から、目に見えて血の気が引いた。
「……まだ、ある?」
「ええ。みんなの分も作ったつもりだったのだけれど……」
は少し照れたように視線を伏せる。
「さあ、召し上がれ」
は、真っ先にラビの皿へスープをよそった。
「一番に食べてくれたから。ラビには、たくさん食べてほしいわ」
「…………」
誰も、止めることはできなかった。
ラビは震える手でスプーンを握り直す。
恋人の嬉しそうな笑顔を守るために。
鍋に残された緑色の脅威を、ただ一人で背負うことになった。