【Dグレ】Twin Ray -灰の世界に響く歌- の短編集
第2章 【番外編】恋人の手料理は、森の味
「……皆さん」
「何さ」
ラビが嫌な予感を覚えたように眉を寄せる。
アレンは、真剣な顔で声を落とした。
「次にティファが包丁を持ったら、できれば目を離さないでください」
「なんでそんな切実なんさ」
「昔、ティファがジャガイモの皮を剥こうとして、訓練用のレイピアを持ち出したことがあるんです」
「何で!?」
ジョニーの声が裏返る。
「“薄く削ぐなら、この方が速い”と言って」
アレンは淡々と続ける。
「確かに速かったんですが、皮だけでなく実まで綺麗に削れてしまって……最後には、さくらんぼくらいの大きさになりました」
「怖っ!」
「それから、焼き魚を取り分けようとして、身だけを綺麗に削ぎ落としたこともあります」
「それは成功じゃねぇの?」
ラビが言うと、アレンは静かに首を横へ振った。
「細かくなり過ぎて、皿の上には骨と魚の粉しか残りませんでした」
「料理下手っていうより、全部剣術で解決しようとしてんじゃん!」
ラビが頭を抱える。
神田が鼻で笑った。
「破壊だろ」
「神田、本人の前では言わないでくださいね」
「俺から言う気はねぇ」
「その言い方、聞かれたら普通に答える気だろ!?」
「聞かれりゃな」
「絶対ティファに聞かせるなよ、ユウ!」
ラビが神田を睨む。
アレンは、困ったように小さく笑った。
「ティファも悪気があるわけではないんです。ただ、真剣になるほど加減が分からなくなるというか……」
「それ、料理させて平気なのかよ」
「だから先程、少し迷ったんです」
「もっと強く止めろよ!」
「今度からは、恋人であるラビが責任を持って止めてください」
「急に全部こっちへ押し付けんなよ!」
ラビが声を上げた、その時だった。
厨房の扉が開く。