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【Dグレ】Twin Ray -灰の世界に響く歌- の短編集

第2章 【番外編】恋人の手料理は、森の味


ラビの片目が大きく見開かれる。

「待て待て待て! 速い! 速過ぎるさ!」

けれど、止める間もなく。

ティファは最後の一太刀を終え、ふう、と小さく息を吐いた。

「……できたわ」

沈黙。

まな板の上には、乱切りにされるはずだった人参の姿はなかった。

代わりに積み上がっているのは、恐ろしいほど均一に刻まれた、鮮やかな橙色の粒の山。

ジョニーの眼鏡が、ずるりと下がった。

「え……これ、人参だよね?」

「ええ」

ティファは真面目に頷く。

「細かい方が、火が通りやすいでしょう?」

「通るどころか、鍋に入れた瞬間消えるさ!」

ラビの突っ込みが響く。

壁際にいた神田が、初めてまな板の方へ視線を向けた。

「……何だ、あれ」

「人参よ」

「そこじゃねぇ」

ティファは首を傾げながらも、細かくなった人参を丁寧に鍋へ移していった。

湯気の中へ、橙色の粒がさらさらと沈んでいく。

「まあ……これはこれで、口当たりの滑らかなスープになるかもしれないわね」

リナリーが何とか前向きに纏める。

「次は、香草を少し刻んでもらっていい?」

「香草ね」

ティファが、調理台の端へ置かれた籠へ手を伸ばす。

緑の葉がふわりと揺れ、爽やかな香りが広がった。

その時。

「ティファ、悪いけれど、先に深皿を取ってきてもらえる?」

リナリーが棚の方へ目を向けた。

「食堂側の戸棚に、大きめのお皿があるの」

「分かったわ。すぐ戻る」

ティファは香草から一度手を離し、厨房の外へ向かった。

扉が閉まる。

その足音が廊下の向こうへ遠ざかったところで、アレンが静かに振り返った。
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