【Dグレ】Twin Ray -灰の世界に響く歌- の短編集
第2章 【番外編】恋人の手料理は、森の味
「それじゃあ、今日は野菜と卵のスープにしましょう」
リナリーが鍋の蓋を開けながら言う。
「ティファは、まず人参を切ってくれる?」
「ええ」
「乱切りで大丈夫よ。あまり小さくし過ぎないようにね」
「分かったわ」
ティファは真剣に頷き、まな板の前へ立った。
包丁を手に取る。
刃の重さを確かめるように、軽く握り直す。
その動きが、何故か調理を始める者の仕草というより、戦闘前に武器の感覚を確かめるエクソシストのそれに見えた。
ラビの笑顔が僅かに引き攣る。
「……ティファ?」
「何?」
「いや。料理だからな?」
「分かってるわ」
ティファは人参へ視線を落とした。
背筋を伸ばし、静かに息を整える。
「……集中」
「待って、その掛け声いる!?」
ラビが声を上げた次の瞬間。
――トトトトトトトトンッ!!
凄まじい音が厨房へ響き渡った。
「うわっ!?」
ジョニーが飛び上がる。
「ティファ!?」
リナリーの手が止まる。
包丁が、目にも止まらない速さで上下していた。
一定の間隔。
寸分違わぬ刃筋。
無駄のない手首の返し。
それは料理というより、完全に剣技だった。