第12章 12
side 安室透
彼女がプレゼントを大事そうに抱えて歩いていく後ろ姿を少し見送った後、ポアロのドアを閉めた。
先ほどまで本当に賑やかだった店内は、一気に静けさを取り戻した。
ジャズだけがゆっくりと流れている。
先ほどまで彼女が座っていた席の片付けを始めた。
まさか今日柚希さんと松田の話を聞くことができるなんて、思ってもみなかった。
刑事さんから聞く松田の話を彼女は嬉しそうに、時々すこし悲しそうに聞いていた。
松田が彼女に誕生日のプレゼントを残していたなんて…。
ぬいぐるみを抱きしめた彼女。
あんなに嬉しそうに涙を流す彼女を見て、僕まで心が温かくなった。
なんだか、心から良かったな、って思えたんだ。
そういえば彼女は言ってたな。
‘‘まだ時間はかかるけど、お見せできる日が来たらいいなと思っている。‘‘って。
爆弾という言葉を聞くだけで震えていた彼女が、そう口にしたとき、僕は思わず作業の手を止めた。
僕は思わず先ほどまで彼女が座っていた席に目をやった。
「少しずつ前を向けているんですね…。」
先ほどの彼女の笑顔を思い出して口角が上がった。
僕の言葉は店内のジャズの音楽に混ざっていった。
松田、萩原。
お前らの幼馴染は、もう少しで前を向けそうだ。
だから安心してくれ。……俺が見守っている。
そう心の中で呟くと、僕は静かにカップを片付け始めた。
side安室透 end