第5章 【第四話】黒衣に宿る祈り
そこに映っているのは、師匠との旅で着慣れた軽装姿の自分だった。
長い移動にも修練にも耐えられるよう、装飾より動きやすさを優先した服。袖口にも裾にも、何度か繕った跡が残っている。インドの砂埃の中で、アレンと何度も向き合った服。
それを脱ぎ、新しい場所の衣を纏う。
「ティファ、少し腕を上げてもらっていい?」
ジョニーの声に、私は我に返る。
「ええ」
指示に従って腕を上げると、彼は肩幅から腕の長さまで、慎重に測っていった。
その隣の作業机には、何枚もの紙と黒い布見本、銀糸の束が広げられている。紙の上へ描かれているのは、これから私が纏う団服の構想だった。
黒を基調とした細身の上衣。
喉の動きを妨げない高い襟。
腰からは、脚の動きを妨げないよう正面を開いた長い布地が流れ、左胸には銀色の紋章が描き込まれている。
まだ紙の上の線に過ぎないのに、祈りのための静けさと、戦うための鋭さが、同じ黒の中に息づいているように見えた。
「ティファは、武器を持ち歩かないんだよね?」
ジョニーが記録用の紙へ目を落としながら尋ねる。
「ええ。ニルヴァーナを発動させると、光が両手へ集まって、二振りのレイピアの形を取るの」
「じゃあ、鞘や武器固定用の金具は必要ない……」
ジョニーの鉛筆が、紙の上を走り始める。
「その分、腰周りは軽くできる。でも、二刀で戦うなら踏み込みも回転も多いよね。長い布が脚へ絡まないように、正面の開き方と後ろの重なりを調整して……肩も、腕を上げた時に突っ張らないようにしないと」
彼の声が、次第に熱を帯びていく。