第4章 【第三話】檻と家のはじまり
「ようこそ、黒の教団へ。長い旅で疲れたでしょう? まずは兄さんのところへ案内するわ」
差し伸べられた手を握る。
小さな手だった。
けれど、その温度は不思議なほど心強かった。
ただ、これから仲間になる者を迎えてくれる、まっすぐな温かさだけがそこにある。
張り詰めていたものが、ほんの少しだけ緩む。
「ありがとう。よろしくね、リナリー」
「うん。こちらこそ!」
リナリーは明るく頷くと、私の腕へそっと手を添えて歩き出した。
すると、耳を擦っていたラビが慌てたように声を上げる。
「ちょ、待てってリナリー! 案内なら、オレも行くさ!」
「ラビは来なくていいの」
「なんで!? オレ、教団内部についてすげぇ詳しいのに!」
「あなたがいると話が進まないからよ」
「酷くねぇ!?」
二人のやり取りが、冷たい石造りの回廊へ賑やかに響く。
私は歩きながら、ほんの少しだけ振り返った。
こちらへ駆け寄ってくるラビと、再び目が合う。
彼はすぐに、人懐こい笑みを浮かべた。
「待ってくれって、二人とも!」
声を張り上げながら、こちらへ走ってくる。
私は前へ向き直った。
さっき感じたわずかな違和感だけが、まだ胸のどこかに残っていた。