第26章 【第二十五話】終幕なき夜・後編
あの時の私は、その意味が分からなかった。
別れは、ただ奪われるものだと思っていた。
けれど今なら分かる。
父は、消えたのではない。
母の歌に導かれて、あるべき場所へ還ったのだ。
だから。
私は、目の前の男を見据えた。
「でも、その痛みを利用して命を捨てさせるなら――それは愛じゃないわ」
静寂。
「残された者が、苦しくても明日へ進むこと」
レイピアを握る手へ、力が籠もる。
「その足を支えるものこそ、愛よ」
支配人の顔が歪む。
「綺麗事を……!」
「綺麗事で結構よ」
私は静かに返した。
「あなたの舞台よりは、ずっと人を救える」
その時。
舞台袖から、複数の足音が響いた。
白いファインダーコートを纏ったトマと、現地で待機していたファインダー達だった。
「支配人の身柄はこちらで確保します」
トマが静かに告げる。
「支援者達の名簿と、観客を誘導していた証拠も押さえました。劇場側の残党も調査へ回します」
支配人の顔が、ようやく絶望に染まる。
「馬鹿な……! この美しさが分からないのか……!」
男はなおも喚き続ける。
けれど、トマ達に両腕を押さえられ、舞台袖へ引きずられていった。