第26章 【第二十五話】終幕なき夜・後編
「誰もしてねぇ」
「してるわよ。今にも劇場ごと斬りそうな顔」
「斬って済むなら、とっくにやってる」
その返答に、私は少しだけ笑みを収める。
確かに、今回の任務はただAKUMAを倒せば終わるものではない。
観客達へ絡み付いた、死者への偽りの誘い。
その黒い糸を断たない限り、また同じ悲劇は繰り返される。
神田も、それは理解しているのだろう。
だからこそ、苛立っている。
そう思った。
「……足引っ張んなよ」
私は小さく肩を竦めた。
「あなたこそ」
神田は鼻を鳴らし、扉の前へ向かう。
「行くぞ」
私は最後に鏡の中の自分を見つめた。
歌姫。
偽りの舞台。
死者を弄ぶ劇場。
――止める。
決意を抱えたまま、私は神田と共に劇場へ向かった。